Special #9-1

役割から導き出したカタチ
-DUENDE×日用品愛好家-

DUENDEで多数のコラムやインタビューを手掛けてきた渡辺平日さん。
今回の記事では、DUENDEをよく知る平日さんと、DUENDEのブランドマネージャー・酒井浩二の対談の様子をお届けします。

2025年3月27日

品質と価格のバランスを意識している

平日くん、今日はよろしく。
まずは自己紹介からお願いします。
 

渡辺

日用品を愛好している渡辺平日といいます。

もともとは日用品とかインテリア関係の記事を制作するライターをやってましたが、2年くらい前に「骨董がやりたい!」と急に思って、現在は文章を書きつつ古物商をしています。

いきなり骨董に行っちゃったからびっくりしたよ。

ところでさ、仕事的に当然だけど、日用品を選ぶのがうまいよね。
この前、TRUSCOのテープディスペンサー(写真奥側)をくれたじゃない?
あれは感心するくらい使いやすかったよ。

もともとTRUSCOの手持ち式のテープカッター(写真手前)は持ってて気に入ってたんだけど、こっちもお気に入りになりそう。

梱包とかでテープカッターを使うことが多くて、今までいろいろなアイテムを使ってきたけど、これはいい製品だね。

「どういうふうに作れば作業しやすいか?」
としっかり考えて開発されたモノだと思う。

 

渡辺

使いやすいだけじゃなくてクオリティも高いですよね。そのわりには価格はけっして高くない。まさに日用品の鑑ですね。

ほら、高価すぎると気軽に使えないじゃないですか。

そうだね。品質と価格のバランスは、DUENDEでも意識しているところだから、(TRUSCOのモノづくりには)けっこう近しいものを感じる。

話が変わるけど、どんなモノにも適切な価格ってあるじゃない?

 

渡辺

ありますね。

最近、主に使っている椅子は6万円くらいだったかな。今は為替で値上がりしているかもだけど。
北欧のブランドの昔からの定番で、すごいきちっと作ってあるのはわかるし。
すごい安いね!!って訳じゃないけど、妥当な値段だと思う。

僕もユーザーな訳で、買う人が適切な価格である、と思えることは重要だと思います。

渡辺

安すぎても不信感もありますし、高すぎるのも疑問はありますね。

そういう意味ではDUENDEは極めて妥当な価格だなって感じます。

はい。これからも精進します!(笑)
 

渡辺

僕、偉そうすぎましたか。(笑)


「モノとヒトの距離を近づける」

渡辺

テープディスペンサーの話に戻りますが、デザインも悪くないですよね。合理的な形をしています。

そうだね、この製品の場合、「テープを切る」役割に沿った形状をしている。
また引っ張った時に動いたりしないような工夫もきれいにまとまっている印象。

 

渡辺

「役割」と「デザイン」がうまく噛み合っている気がします。逆にそれらが乖離すると、なんだか不自然な感じになっちゃいますよね。

製品の開発というのは一筋縄ではいかないもんでね...
単純に役割を果たすだけではダメじゃないかと思っているの。
 

渡辺

たしかに…。役割を追求するあまり、かえって野暮ったくなっているものってありますよね。

そうそう。ちょっと野暮ったいって自分が感じるモノってあまり目立つ場所に置きたくないじゃない?でもきちんとデザインされてて格好いいと感じれば、自ずとそいつの捉え方とか扱いは変わってくるよね

僕らくらいの世代からすると、昔に比べて世の中きちんとデザインされている製品がとても多くなったと思うよ。 

 

渡辺

なるほど。

今の話に関連するのですが、「モノとヒトの距離を近づける」というのがデザインの力だと感じています。

ほう。
 

渡辺

あまりにもデザインがお粗末だと、目立つ場所には置きたくなくなりますよね。

そういや、だいぶ昔に買ったツボ押しがあって、ほとんど毎日使っているんだけど、見た目がちょっとまずいんだよね。
 

渡辺

うーむ。形状もそうですが、蛍光っぽいオレンジカラーも酒井さんの事務所には合わないですね。

 

実はこれは2個目なんだよね。それくらい気に入ってるけど、お客さんが来たら隠すね、これは(笑)
 

渡辺

(笑)ツボ押しっていう機能性と今のオレンジ色は合ってるとは思いますが、モノトーンだったらこの部屋にも合いそうですね。

 

これとはまた違いますが、たとえばケバケバしいデザインのティッシュってありますよね? 僕はああいうのが苦手で……。

 

正直、今のシンプルなインテリアには合わないよね。

渡辺

なんらかの理由で使うことになったら、使用するとき以外は引き出しとかに隠しちゃうと思います。

 

ここまで極端じゃなくても、同じように感じている人って少なくないんじゃないかと。

STAND!STEEL   DESIGN GENTA KANAYAMA

渡辺

でもDUENDEの「STAND!」を使えば話が違ってくるわけですよ。

これぐらい洗練されたティッシュボックスであればどこに置いても恥ずかしくないし、むしろ空間の雰囲気を高めてくれる。

これはまさにデザインの力ですよね。

STAND!はまさにそうだよね。
僕もユーザーとしてみた時に、これが20年前のデザインか、と感じないこともすごいと思ってます。

「とにかくシンプルがいい」とは限らないとは思いますけど、装飾っ気がないことは、飽きないっていうことと密接な関係があるとは思っています。


モノの役目や用途からデザインを導き出す

渡辺

DUENDEって、機能とデザイン、価格のバランスがいいですよね。

それは そうだと思います。
 

渡辺

「いい日用品」の条件を満たしていますが…。

もしかしてDUENDEは日用品として作っているのですか?

もちろん。日用品として作っているよ。
 

渡辺

そうなんですか! 

というのも、DUENDEのプロダクトは「オブジェ」としての側面もありますが、日用品とオブジェってずいぶんと距離がありますよね。だからちょっと驚いてしまって。

あ、そう?
まあ日用品と言うとあれだけど、人が日々使うモノ=日用品として考えているってことね。

渡辺

そうゆう捉え方ですね。

よく「機能美」といいますが、日用品としての機能を研ぎ澄ませることで、オブジェのような美しさを引き出しているのでしょうか?

機能の前にまずは役割かな。
DUENDEは基本そのモノの役目や用途からデザインを導き出している製品が多いと思ってます。
 

渡辺

ああ、言われてみればオブジェのように美しいけど、その製品の役目、用途をきちっと満たしていますね。

機能は、その道具が持つ「役割」を果たすための「能力」という印象。
役割はその以前に「何の為にどこでどう使われるか」ということかな。

 

渡辺

なるほど…。

咀嚼するのが難しいですが、分かる部分もあります。

なんとなくですが「用途」は「機能」より先にある気がします。より根源的というか。

そうだね。
「どういうふうに使う」から、「そのためにどういう機能」が必要か、というのが流れでしょうね。
 

渡辺

うーん、このあたりがDUENDEの「キモ」な感じがしますね。

 


違うのに、どちらもDUENDEらしい

渡辺

ところで最近、DUENDEとしては大物ともいえる 高さの違うダイニングテーブル を二種類発表しましたよね。

 

これらは、ずいぶん昔からあったプロダクトのようにも思えるし、おそらく数十年経ってもも古さを感じない時代を超えたデザインだと思います。

 

なんだかすごく嬉しいお言葉を頂戴致し(笑)

ダイニングで天板をこの薄さにすることで、主役家具でありながら存在感を少なくして空間の邪魔をしない、とことん削ぎ落したプロダクトだとは思ってます。
 

渡辺

そうですね。脚部とかもすごいですよね…。

 

ちなみに以前のインタビューでも伺いましたが、僕はDUENDEの製品の中でサイドテーブルの『SOLID STEEL TABLE』が特にお気に入りです。

ああ、そう。
 

渡辺

まるで「テーブル」という概念をそのままカタチにしたような…、そういうミニマルな佇まいがたまりません。

SOLID STEEL TABLE    DESIGN PERMANENT31

あれは「構造的にも、製造工程においても、これ以上省けない」ってところを考えて突き詰めたモノだからそう思うのかも。
 
そこは今回のダイニングテーブルにも繋がっているしね。

 

渡辺

なるほど。

なんだか矛盾するようですが、限界まで省いているはずなのに、どこかゆとりを感じさせるところが興味深いです。

好みとかもあるとは思うけど…。
「省く」のは、やりすぎるとつまらなくなってしまう感じもするんだよね。

『SOLID STEEL TABLE』も最初はよりシンプルに天板を丸くするつもりだったんだけど、途中から「なんか違う気がする」と思うようになったの。
 

渡辺

そうなんですか。

シンプルなほうが飽きない気がするじゃない? でもサイドテーブルのほうはそうじゃなかったんだよね。
 

渡辺

というと?

天板以外のベースとなる脚部の構造はミニマルにできました。
その上に載る天板を完全な丸にすると、近寄りがたい雰囲気になっちゃう気がしたのね。
他の家具に寄り添わない感じになるなぁと。

 

渡辺

なるほど、なんとなくわかります。

『SOLID STEEL TABLE』はサイドテーブルだから、部屋のどこにでも置けるよね。
あちこちに設置するなら…、丸や正方形じゃなくて前側と後ろ側のカーブを変えた不定形な天板のほうがいいんじゃないか。

たとえば壁際に設置するとしたら、丸い方を手前(壁に接さない方)にしたほうが危なっかしさは感じないでしょ。
 

渡辺

たしかに。不定形ならではの使い方ですね。

小さい台だから「ココ! 」っていう限定した場所で使うものではないじゃない?
 

渡辺

そうですね、うちでも使っていますけど、ずっと同じところにあるわけではありません。

でしょ?
そういう使い方をイメージしてたの。
 

渡辺

なるほど、そうゆう考えであの形になったのを聞くと、先ほどの「どうゆうふうに使う」「そのためにどうゆう機能」が必要か、というのが理解できますね…。

ところで興味深いのが、ダイニングテーブル「SOLID DINER TABLE」の天板は、きれいな丸天板ですよね。

 

これは天板と支柱のバランスを考えて丸くしたのではないかと思うのですが、実際のところはどうなんですか?

SOLID STEEL DINER TABLE    DESIGN PERMANENT31

SOLID STEEL HIGH DINER TABLE    DESIGN PERMANENT31

DINER TABLE(ダイナーテーブル)っていう名称なんだけど、コンパクトなサイズにするのが大前提だったの。

渡辺

ふむふむ。

その”小さなダイニングテーブル″の天板を不定形にすると全体的にアンバランスになりそうでしょ?

渡辺

そう思います。

あとは単純に使いにくくなるだろうと。テーブルは人が椅子に座って使うものだから、きれいな丸とか四角のほうが多分使いやすいよね、そもそも小さいんだから。
 

渡辺

うん、きっとそうですよね。

四角のダイナーも、角のカーブはすべても同じアール(曲がり具合)にした。もしアールがバラバラだったらずいぶん使いにくくなると思う。

まあ不定形でも成立するけど、小さいとは言え製品自体が大きいから、空間の中での存在感も当然大きいでしょ?

 

渡辺

キッチンダイニングの主役ですからね。

そう。存在感が大きいから、見た目のインパクトも大きいし、特徴が強いと「デザインっぽさ」がやたら強く出ちゃうだろう。

そういう理由もあって、天板を「正円」と「正方形」にするのは、開発の段階で共同制作者の引間さんも同意見だったの。

渡辺

なるほど。バランスということだけではなく、使いやすさや置かれた空間のことも考えてそうなったということなんですね。

 

深い…。

…だろぉ?(笑)
 

渡辺

です。(笑)

平日くんお気に入りの「SOLID STEEL TABLE」は、サイドテーブルだから。
室内のどこかで、なにかを置くための台という発想から、ミニマルを目指していき、使われるシチュエーションとかを踏まえて不定形にしたって感じ。

 

渡辺

ふむふむ。

ダイナーテーブルとハイダイナーテーブルは、基本そこで座って食べたり飲んだりするし、壁に付けて使うケースも多いよね。
そういう理由もあって「まんまる」と「ましかく」にしましたとさ。(笑)

 

渡辺

おもしろい話だなあ。

 

ふたつのテーブルはそれぞれカタチが違うけど、どちらもDUENDEらしいミニマルなデザインに仕上がってますよね。

それは役割や、人が使う用途から導き出した結果なのかなと改めて感じました。

それはすごい嬉しいお言葉を頂戴致し(笑)
 

渡辺

(笑)

今日はありがとうございました。いろいろと興味深いことが聞けて楽しかったです。

 

特に「シンプルにすれば飽きないモノができるわけじゃない」という話は大きな発見でした。

うん。そんな気はします。
 

渡辺

またお喋りしましょう。

うん。また他のプロダクトとか長くやってる製品についても話してみたいね。

 

渡辺

もちろんです。次の機会を楽しみにしています。


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渡辺平日

日用品愛好家。大学を卒業後、インテリアショップに就職。仕事を通じて「もの」に対する知識や感性を養う。現在は古物商に転身。東京を中心に各地の骨董市に出店している。

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